051349 ランダム
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TRICK PARTY

TRICK PARTY

distance night11

翌朝

……と、言ってもずっと夜空だから、「朝」って気分が全くしない。

「ふわぁえ~」

(たぶん)一晩中、座った状態で寝てて、体が凝り固まってる。

今何時ぐらいだろ?外の明るさがずっと一様だと時間感覚狂うなあ……

寝ぼけ視線をベッドに向けると、その上でナストが座っていた。

ひざを立て、顔を外に向けている。

「おはよお。今何時ぃ?」

「お?起きたのか?たぶん6、7時間は寝てたな」

「そっかあ……」

だめだ、まだ眠い気がする。見栄張ってないでベッド借りればよかったなあ……

「しんどそうだな。ベッド借りときゃよかったとか思ってない?」

「全っ然!思ってません!ええ思ってませんとも」

「わかりやすいな、お前は」

ナストが柔らかに微笑む。

そんな、のんきなの会話


「どーも、おはよう御両人」


唐突な声に、あたしは思わず立ち上がった。

「寝起きか?遅いな」

「……ルシャ?」

扉の所に立ってる人物に、あたしは正直驚いた。

ルシャはあたしたちに、しかもこんな朝に会いに来るなんて思ってもみなかったし。

「何?こんな朝っぱらに」

考えてみれば、このときすでに疑う余地が大アリだったのだ。

でも食堂でのルシャの違う一面を見て、第一印象の方のルシャを忘れていた。

最初の、悪魔のような冷徹さを持った、ルシャの事を。

「今日はわたくし……」

そうだ、これはあの時と同じだ。

あの時と同じ、慇懃な礼。心のかけらもこもってない、ただただ慇懃なだけの礼。



「ナンバー123118の死刑を執行しに来ました」



顔を上げると同時にルシャが外套の内側から銀色の銃を取り出し、ナストに向ける。

空気が凍った。背筋に嫌な寒さが通り抜ける。

―とうとう来てしまったのだ。この時がー

頭の片隅が訴える。

と、とっさにナストが飛びのき、ベッドの上にしゃがみかまえた。ばらけたシーツが床に広がる。

「なぜ、お前が?」

「俺の仕事だからだよ、これが」

一歩、ナストに近づく。

「ちょっと待って!」

あたしはルシャの銃を握ってる方の手を押さえた。

「いきなりなんなのよ!なんであんたが、こんなところで!」

「邪魔」

瞬間、あたしは元の壁に叩きつけられていた。

「うぐっ……!痛ったぁ」

「まなみっ!?おんまえ女を壁に叩きつけるか!?普通!」

「知るか」

ルシャの目は何の感情も浮んでない。

まずい、これじゃマジでやられる!

また一歩、ルシャがナストに近づく。

「うわさの死刑執行人がうちの神サマかよ……」

「俺を神と呼ぶな」

ルシャが静かな怒りをあらわにして言う。



と、あたしはある事に気付いた。



ナストを救えるかもしれない、単純なことに。

「だって神サマだろ?この世界の創世者サン」

「なんとでも言え」

また一歩。

あともうちょっとだ、もうあと三歩。

ルシャはあたしの事なんか目に入ってないし、周りの状況も気付いてない。

あたしは思った。



―これは、『賭け』だ。

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